社会福祉法人 尽誠会

《駆け出し介護医療(2)》

   =認知症介護法の潮流= 「認知症対策&予防策」

従来、家族介護(座敷牢拘束の歴史の巷談等)が主体となるべき範疇だとされてきていた「呆け(ボケ)老人」への対応が、様変わりしてきた昨今においては、「呆け爺」介護の主役だった「嫁(ヨメ)」に取って代わって、社会全体で観ようとする制度設計が拡がってきつつあるようです。「痴呆症」と呼ばれていた時代の小規模ケア(宅老所等)の施設(グループホーム含)へと移行して、今や地域社会ぐるみで支えんとする動きを導くべき施策となる「地域包括ケアシステム」構築の啓蒙が加速しつつあります。また一方で認知症ケア法への取り組み方として、特別な技術や器材・薬剤を要しない介護の手立てが、数々のメディアに紹介され、話題になったこともありました。旧くはスウェーデン発祥の超コミュニケーション法として紹介されたことのある…尊敬と共感を以って関わることを旨とし、尊厳の回復を図らんと「VALIDATION」(バリデーション)と称される手法が伝わり、比較的最近のところとしては、「HUMANITUDE」(ユマニチュード)と呼ばれるフランス発祥の手法が記憶に新しいところです。認知症を患ったお年寄りに対峙して、「見つめる」・「話しかける」・「触れる」・「立つ支え」を基本とした身近な介護する側からのアプローチによって、無気力・無関心に陥った方を自立への道に導く方法です。閉じこもりによる廃用を防ぐ活動により、自発性を誘発できるものとなるようです。こうした社会の潮流に乗り、日本版の新しい認知症ケア法としての「自立支援介護(Funçtional Reversible  Care : FRC)」とも呼ばれる画期的取り組みが脚光を浴び、内閣で検討中の海外輸出可能なプロジェクトとして紹介され始めています。

自立支援介護の基本となる4つのケア(介護ワーカー 様より引用)

 

近年、認知症対策が声高に叫ばれるようになって、政府施策としての動き出しにも、「オレンジプラン」と称するオレンジのカラーイメージで、社会全体に認知症の理解を広め、皆で支えようと図る国策としての総合的アプローチの啓蒙活動がマスメディアの話題をも席巻しています。一般の地域住民向けの認知症講習会により、理解を深めてもらい、「オレンジリング」と称するリングを受講証代わりに交付して、腕や身に付けておくことで、認知症サポーターとしての認知症理解と人材育成を図るようになってきています。家族介護の負担軽減を図り、社会全体で認知症のお年寄りを見守り支えようと目論む官製の・「オレンジ・プラン」の目玉政策となるのです。

 

新オレンジプランの中核(認知症ねっと 様より引用)

脳トレーニングやら基本的生活改善等による認知症状の進行予防と、治癒を目指す手法を含めた様々な分野からの包括的な取り組みが、多数紹介される機会が増えてきました。そうした社会環境にあって、我々の携わる介護医療やリハビリテーション医療の現場においても、入院医療や施設ケアになじまない認知症患者さんは、入院療養生活の継続や治療行為を受容する困難さだけでなく、リハビリ効果の阻害要因として問題視される場面が多く、進行予防策の実践が重要な課題となっている現状があります。未だに救命救急医療の最前線の現場においては、認知症なるが故に、集中的な治療行為を続けることがままならず、放り出されてしまうケースが後を断たないといわれています。