社会福祉法人 尽誠会

《駆け出し介護医療(3)》

=自立支援介護の奨め=

認知症の周辺症状として問題に取り上げられ易い様々な行動障害の症状(BPSD)に至っては、生活障害をきたす最たる現象と化して、介護現場におけるケアの実践ですら、極端に停滞させてしまいうる元凶となっているようです。認知症老人ケアの場面においては、要介護老人の一般的なケアの行為とは質の異なる難しい側面を孕んでいるのです。要介護認定の評価基準に反映され難い所以でもあるわけです。こうした行動障害をはじめとする認知症状の発生源は、高齢者に起こりがちな脱水症状に伴う脳の循環障害による譫妄状態なのだとする分析に基づき、体調管理上許せる範囲で可能な限りの十分な水分補給こそが、認知症ケアの大切な第一歩だと、数々の実績に裏付けられる自信に満ちた理論を提唱しつつ、その実践の展開を紹介した国際医療福祉大学の竹内孝仁教授の書籍に遭遇する機会を得ました。かねてより自らの臨床の場において、認知症への対応に苦慮することが多かった私達に、強烈な光が射したような思いに駆られるまま、その理論を学び、実際に検証してみました。考えてみれば、至極当たり前なレベルの生活改善法として取り上げられる…水分補給のみならず、栄養・排泄・運動「水・飯・糞・運動」といった基本的な生活行動の調整によって、認知症のもたらす行動障害の症状が消失(治る)していく過程に入るのです。広く一般に「自立支援介護」とも呼び倣わされるようになり、介護の力で認知症の克服を目指す手法によって、認知症の周辺症状「BPSD」が見事に改善していく様は、驚異的なカルチャーショックを受けることとなりました。しかしながら、最初の三年間の実体験による検証で、しっかりと確信を得るに至った過程においては、実際に経験してみると、お年寄りのケースによっては、非常に難しい方が圧倒的に多いという難題に突き当たる場面が多発するため、いろんな工夫や手間暇と辛抱強く挑み続ける根気とが強いられることとなりました。

周辺症状(BPSD)とは(医療法人社団 緑会 佐藤病院 様より引用)

 

「家族で治そう認知症」と謳って、家族介護者主体の挑戦意欲を促す取り組みではあるものの、関係する介護サーピス機関や担当介護支援専門員等の協力態勢は不可欠であり、むしろ大きな比重を占めるであろうことは敢えていうに及びません。そうした背景を想定しながら、国際医療福祉大学大学院の全面的な協力を得て、私の前任地であった組織でも、医療機関としては初めてのアプローチとなる『認知症あんしん生活実践塾』に挑戦することができました。そして塾生の皆様とスタッフ一同の頑張りにより、そこそこの好成績を上げることができました。

こうした実践体験を通して、担当したスタッフの行き着いた印象を以って、

『認知症成すも治すも家族柄』

という境地に達する台詞を語り合う学びを獲得するに至りました。