社会福祉法人 尽誠会

《駆出し介護医療(5)》

=看取り前後の流儀=

   「GRIEF-CARE」

 厳かな看取りの一連の流れにおいては、臨終を告知する刻だけでなく、その前後に為すべき振る舞いの作法を、医療・介護に携わる立場の者として、様々心得ておかねばなりません。まずひとつには悲しみに暮れる家族の愁傷に寄り添う気持ちの表明は当然の段取りとして、長短の如何には関わらず、直接的に看護や介護を担った家族や関係者への労りの言葉掛けも肝要な手順となります。さらには看取った後の御遺体への合掌も自然の流れの中で、忘れてはならない所作となるでしょう。そして臨終の場を退去した後も、病院での入院病床からの御遺体搬出時の見送りも、大切な一連の儀式といえます。時間的に可能であれば、自宅や葬儀会場での葬送の儀式へも弔問して、導師の読経を聴きながら焼香するまでを尽くせるなら、自分なりの看取り後の作法として、独断的な気安めであっても完結できることになるでしょう。      

 

 

 また居住環境と臨終の場が施設であった場合、同居者が情況判断できるか否かの如何に関わらず、去り逝く故人とのお別れの場を設ける配慮が、施設管理者には是非必要かと思います。やがて自らも行く道であるとの認識と覚悟を啓く上でも、役立つ環境作りになるかと思われます。施設介護に従事した介護職員とて、自宅代わりの環境で御世話を尽くした感慨にどっぷり浸かり、入れ込んだ博愛の心を反芻することで、仕切り直すお別れの時間は、その後のケアをさらに充実させる為に、重要な段取りになることでしょう。

 さらには訪問診療をはじめ、訪問看護や介護及び通所介護の送迎等で、自宅に出入りすることにより在宅医療・介護に関わっていた場合とて、看取りを控えての時期に介護者の支えとなるべき立場に従事しながら、自らも諦念の覚悟を極める過程に身を委ね、最期の刻の哀しみを共有する段取りを踏むことが大切になります。立場は違えども直接の家族介護者と戦友感覚で語り合う時間はとても大切な手順です。仏壇の前で語らう後参りの過程は、共感する感性を養う上でも、看護&介護スタッフとしての力量を培う素養作りの糧に成り得るでしょう。全霊を傾けて看・介護に従事した証を確かめる作法として、自らの業務能力を高める手順になる筈です。「GRIEF-CARE」を重んじる所以といえます。