社会福祉法人 尽誠会

《駆出し介護医療(4)》

=南部福祉水滸伝=

 未だかって類を見ない程のテンポで進む超高齢化社会の到来を見据えて、未知との遭遇が想定される社会を支える対策が、なかなかの難物だと判りつつも、見通しの利かない手探りの時代が続いています。個々の思いつきによるチャレンジばかりが乱れ飛ぶ程に横行する不透明な世相が続く中であればこそ、旧きを訪ねてみることで、新しい発想をイメージアップする過程に挑んでみました。   

 福祉の世界の人脈に接点を得て、足を踏み入れたきっかけは、南部八戸に草鞋を脱いでから、暫し介護医療の現場に身を投じることて、改めて学んだ斬新な経験を通してのことでした。

 その当時、リハビリテーションの強化を守備範囲とする医療現場に従事する日々の中で、そのアフターケアとしての介護医療に携わる機会の多いフィールドに身を委ねて、出会った福祉関係の先人達の心意気と破天荒なまでの活力に感銘を受け、尊い「福祉の心」に寄り添いながら、医療人としての立場を超えて、福祉活動を最大限支えていこうとするモチベーションを得ました。既成の制度に乗っかってるだけで、遵法精神からはみ出すような行為等を、極力避けがちな傾向が目立つかなという先入観で見てしまっていた福祉人脈の中にあって、行政主導レベルのセーフティ・ネット・ゾーンに拘らずに、福祉活動の対象となるようなあらゆる分野での生活弱者達(高齢・障害者・長期病床療養者並びに諸々の生活困窮者や更生中受刑者等々)の様々で超多彩な需要を見極めながら、博愛の心を以てアイデア豊かな方法を駆使することにより、掬(救)い上げようと奔走する志を発揮する人材にも、多々遭遇することがありました。その中には敢えて法を(犯すというより)むしろ無視しながら、元より眼中にはない既成の制度を逸脱するような範疇において、例え独断と偏見に満ち満ちた手段であったとしても、弱者救済を志す博愛精神(ヒューマニズム)に裏打ちされたスピリットの下で、福祉界の英傑達が集結して、敢然と御上に挑み、施策を先取りするが如き先達の挑戦の歴史を彩ってきたようです。その精神的土壌は果たして何処にあったのでしょうか。寒冷地にあって再三再四の山背による冷害や津波等の災害に襲われ続けた土地柄に共棲する者同士の互助意識の上に培われた「絆」が醸成したものだったのでしょうか。

 

 

 その姿はあたかも中国の古典である「水滸伝」に描かれた英雄達の生き様を彷彿とさせ、暴君(天災)のもたらす悪政(救難)を助け合いの力で正さんと、梁山泊に集結して決起し、災害という途方もない脅大な力に正面切って刃向かった歴史であり、様々な能力に長けた猛々しい英雄の物語を如実に連想させることになりました。法に定めた範疇の如きセーフティネットから落ち零れてしまう弱者達を、掬(救)い上げるのに遙か届かぬ施策の深い「エアポケット」を埋めるべく、御上の威光等はものともせず、時代を先取りして、果敢に決起の連鎖を誘発しつつ、敢然と起ち上がった矛先には、御上ではとても手の届きそうにない理想郷となる筈の共生社会の創生を夢見ていたようです。爆発的なエネルギーを蓄えて、考え得る限りのありとあらゆる制度を具現化しながら、在るべき方向へ力強く御上を引き擦って行く有様が、あたかも水滸伝然としていて、爽快・痛快な劇場型の営みとなっていたように思います。

 かっての私の戯言の中で、南部地方で出会った医療人を、総じて「奇人・変人・怪人・狂人・愚人・猛人」と表現したことがありました。同様の視点で、南部地方の福祉人の特長を表すならば、さしずめ「超猛人」「超賢人」ということになるでしょう。