社会福祉法人 尽誠会

《蔵出し医療談義(8)》

=脳リハビリの効用=

 地域住民の中でみつかる認知症の発生頻度は、65歳以上の高齢層において、少なく見積もっても、約30%以上だと言われています。  そのうちで90%の方は、悪い生活習慣が祟って起こる生活習慣病の類だといえます。軽度(小呆け):中等度(中呆け):重度(大呆け)の比率が:2:2:1の割合となります。最近の増加数たるや、各地域に設けられている認知症疾患センターだけでは対応困難なレベルにまで増え続けているといえます。認知症の専門医師だけでなく、地域医療を担う医師達との病診連携の中で対応していく素養とスキルを、身につけておく必要があるのです。家庭医としての立場を利用して、生活環境の改善を実践する視点が大切になってきます。さらに地域ぐるみの共通認識の下で見守り、支え合っていこうとする意識造りも重要です。地域社会の人間関係というのは、認知症対策の決め手に成り得るものだと言っても過言ではありません。認知症サポーター養成の施策が急速に拡大する所以だといえます。オレンジリング(認知症講習を受けた住民に無償支給)を携えた地域住民が街中に溢れる時代が待ち望まれます。

認知症の特徴や症状(LIFULL介護 様より引用)

 

 概して認知症に陥り易いのは、現役時代に働き詰めだったインテリと呼ばれる知的階層の人達で、医者や弁護士や役人や教師等々、企業戦士と呼ばれる人々も含めて、仕事一辺倒に埋没した日々を過ごしてきており、趣味も遊びも交友も軽視して寂しい人生行路を辿っています。だからいったん定年となった時に、音楽もスポーツもゲーム等の遊びさえも、仲間と楽しむ機会を作れず、出不精になって引き篭もる生活に陥ってしまうのです。こんな寂しい時期が4~5年も続くと、いったん脳機能が落ち始めて、その後数年のうちに、予備軍&軽度→中等度と進み、ひいては重度へと転落してしまうようです。いったん重度に堕ちると、もはや回復への途は望めなくなります。だから軽度にも至らぬ予備群(MCI)の時期に、もっと注意を払い、手を打っておくべきだったといえます。予備軍の段階で生活改善や脳活性化を図れば、認知症の発症を防ぐことは可能なのです。この時期であれば回復率が目覚ましいのは勿論のこと、手間も費用も掛からないという点において、最良の方策と考えられるのです。

 

 人生は「よく働き、よく遊べ!!」です。  仕事一辺倒で、趣味・交遊(社会交流)のない人生が危ういのです。注意すべきは趣味を御稽古事だと混同してしまう傾向があることです

 お茶(茶道)やお華(華道)や書道等と、「道」を極める御稽古事は、脳活性化にはあんまり役立ちません。慣れた十八番を独唱するだけのカラオケのような物真似も駄目です。仲間と競争したり、ハーモニーに気を配るコーラスのような仲間との同調を図りながら、しかも楽しく笑いたくなるようなものこそが、脳の活性化に役立つのです。

 

 大切なことは「認知症は家族の病気でもある」ということです。家族というのは社会の最小単位ですよね。家族の中に暖かい団欒のある雰囲気を造れない人は、当然のこと社会から疎まれ、孤立する顛末となります。 妻と二人で「人生の夢」についてじっくり語り合えない人、子供達と戯れ合って遊び、愉しくキャッチボールしたり、プロレスごっこに興じたり、将棋や囲碁を差したりして遊べない人等々が含まれます。またそんな家庭内で育てられた子供達は、揃って感性の乏しい、心の冷たい人間に 成長しがちなのです。一流と呼ばれる大学に入れたとしても。仮に高級官僚と呼ばれる地位に就けたとしても、やっぱりその子は心貧しい思い遣りのない人生を歩むことになるでしょう。親友も作れないでしょう。

 

脳血管疾患・意欲を支えるポイント(LIFULL介護 様より引用)

 

 認知症は人生の総決算として、仕事からの引退後に現れてくるものです。どんな人が定年早々に呆けてくるかは、40歳頃までに明々白々と分かってくるものです。認知症のお年寄り達の脳活性化訓練(脳リハビリ)と共に、配偶者・子供達の感性教育までも並行して実施していく必要があります。特に若い人達にゲームの遊び方や歌の楽しみ方を教えておかなければ、折角お年寄りがディサービスで良くなって帰ってきても、家庭の中でまた逆戻りして悪化してしまう可能性が潜んでいるからなのです。今では中等度レベルの呆けから回復して、10年以上も元気を保っているお年寄りが沢山居ますが、それは子供達が暖かい家庭に限られています。老人性認知症は突然発症してくるものではなく、軽度~中等度~重度へと、段階的に2~3年の間に徐々に進んでいくものだと言われています。この予備軍を含めて、軽度~中等度レベルの段階で早期発見して手を打つと、何とか回復させることができます。

 

 その簡単な目安として、小呆け(コボケ)の軽度レベルではまずもって、覇気・意欲がなくなり、トボトボと歩く姿が目に付くようになります。眼の光が鈍くなり、何も感動しなくなって、自発的に計画して外出することもなくなります。老人会等での集金も上手く熟せずに、一人前の社会人としては認め難いレベルに陥ってしまいます。中呆け(ナカボケ)の中等度レベルになると、その支障が家庭生活活動にまで及ぶため、炊事・洗濯や庭の手入れもまともにできなくなります。それでもまだ自分の身の回りの日常的な始末(排泄・入浴・更衣)程度ならきちんとできます。ここまでが認知症を治せる対策が可能な最低限のレベルだと理解してください。大呆け(オオボケ)の重度まで進んでしまうと、もはや手の打ちようがありません。家族の介護負担が重くなる一方と化してしまうのです。

認知症発見のきっかけ(LIFULL介護 様より引用)

 

 「90歳で矍鑠」という理想の姿を実現する秘訣は、足腰等を鍛えるための毎日の散歩(5000歩)(傍目には徘徊)と、週に2~3回位は仲間との交遊(老人会や公民館活動等々)による社会参加によって、笑いながらテキパキとゲームやスポーツを楽しんだり、歌(合唱ハーモニー)を嗜むことで脳の活性化(脳リハビリ)を図ることが大切なのです。