社会福祉法人 尽誠会

《蔵出し医療談義(7)》

=社会栄養啓発活動=

 高齢者の栄養不足が臨床医学の現場で認識されるようになってから、早十数年以上経ったのですが、入院医療における問題提起が奏功した流れは、もはや臨床を離れて、社会全体の高齢者にも向けられるようになり、「SOCIAL NUTRITION」則ち社会栄養学としての啓発活動が徐々に全国的な拡がりをみせています。『WAVES』(We Are Very Educators of Societyの頭文字)と称される社会貢献活動が展開されるに至っています。日頃、病院における栄養療法に従事する各種諸々の専門職集団が、全国津々浦々からイベント開催地に馳せ参じ、街行く高齢者へのプロモーション活動として、任意に参加を呼び掛け、健康意識に関するアンケート調査や、身体計測(身長&体重&BMI)・筋力測定(握力&舌圧&ピンチ力等)を経て、総合評価の下、個別にそれぞれに応じた栄養相談を施すという一連の流れの中で、一般の地域住民に栄養改善意識を喚起しようと試る催しで、地道な全国展開を目論んでいるところです。

『元気に食べてますか』と問い掛けるキャッチフレーズを掲げ、揃いのオレンジカラーのユニホームに身を固めて、颯爽と街頭情宣活動に臨むのです。日本静脈経腸栄養学会(JASPEN)という日本有数の巨大医学会が後押ししているイベントなのです。

WAVES Japan ユニフォーム

 

この社会運動をリードする先駆者ともいうべきは、現在では『WAVES』と称される「Social Nutrition」則ち社会栄養学の啓発運動の提唱者らしく先頭に立って、精力的に活躍しておられる藤田保健衛生大学医学部外科緩和医療学講座教授に君臨される「東口髙志」先生であり、日本静脈経腸栄養学会の理事長を兼任されて、多忙を極める日常の中で、この社会運動の旗頭として精力的に活躍されているのです。その強力な指導力とカリスマ然とした神々しさ漂う存在感たるや、あたかもどこぞの新興宗教団体(カルト教団?)を率いる教祖様のような姿を彷彿とさせています。というよりは、日本の国産み伝説として、神話に登場してくる神様である「伊弉諾尊(イザナギノミコト)」のようなイメージを連想させる異彩を放っています。

外科医でありながら、栄養学を極め尽くして語り継ぐ「崇高な志」の真髄は、彼の真骨頂ともいうべき珠玉の講演『いきいきと生き、幸せに逝く』と題する法話のような語りの中でも、しっかりと全国各地の聴衆の心に響き続けていると思います。まさに医療革命児としての稀有な存在は、語弊のある表現を敢えて用いるのならば、栄養学の著書をバイブル的な教典と崇め奉る宗教団体「栄養の科学」というか、「栄養真理教」といった様相すら呈しており、その教祖様とも見紛ってしまいそうな後光の差すが如き東口先生から発っせられる詔は、日本の医療界に激しい変革の潮流を創り出している有様で、自分自身がそうした教祖様の狂信的な信者の一人だと確信し、自称して憚らぬ思いとて、決して過言ではないとの自覚を持っている次第です。

過去の自らの医療行為において、高齢者の認知症に伴う意欲低下や脳卒中等の後遺症による身体障害としての嚥下障害(困難)搦みの摂食障害の対処法に、とことん悩み抜いていた暗澹たる臨床経験の中で、当時から社会的にもネガティブなイメージが付き纏っていた経鼻経管栄養や胃瘻(造設)栄養の正当性を敢然と唱える権威者が現れたのです。低栄養の弊害(免疫力低下)を克服するのに、必要不可欠な栄養療法の存在意義を標準化した手法であると確立してくれた暗闇の一縷の光明でした。理路整然とした説得力のある理論によって、明るい展望を有する道を切り拓き、道標を示してくれた功績たるや、私自身の来し方の様々な場面の中で、貴重な珠玉の教えをいただいた医療人脈列伝回顧録(先述)の中に、当然列挙すべき対象となる重要な人物の一人として、取り上げておくべき存在であることは言うまでもありません。

      WAVES Japan in 八戸