社会福祉法人 尽誠会

《よもやま世間噺(6)》

=新橋盗み聴き独り酒=

 官庁街に程近く隣接する歓楽街(特に東京新橋)辺りの居酒屋で、寂しく独り呑みしていると、思いがけなく極上の酒肴が供される体験と頻繁に遭遇します。殊に自分の守備範囲である医療分野の施策を、先物買いしようと企てるのならば、厚生労働省の木っ端役人連中が、仕事帰りに闊歩しつつ屯する新橋界隈が打ってつけの溜まり場であり、我が輩の歪で邪な趣向と欲求を満たしてくれる盛り場となるのです。「我が輩は狸である」風情の耳だけは達者で敏感なお呆け状態となれるのです。大衆居酒屋での独り酒に、得も言われぬ秘かな快楽が潜んでいるということになるのでしょうね。高級官僚とはいわないまでも、陰湿な政治屋共が、密室て政策の談合を重ねる高級料亭とかではなく、下級の叩き上げ役人の愚堕めきトークの中には、医療現場の端くれを自称する小生ににとっても、煌めきを放つ宝石の如きネタが鏤められているのです。それは医療現場末端に即効性のある効用を、もたらしてくれる原石のような混在物を内蔵しているといえます。狸耳で聴き耳を立てながら呑む習慣こそ、連れがあると適わぬことながら、一度旨味を知ってからというものは、すっかり病みつきとなってしまいそうな「下衆の極み」爺々の極めつけの道楽となっているといえます。

 

 

 かってとある地方の中核都市の医療に従事していた頃にも、同様の体験がありました。近くに県庁と市役所に挟まれたロケーションを配する絶好の環境で、長年大衆居酒屋を営む店舗では、当然の如く役所関係の職員達が多数出入りして、立場を分かたず弁えずに、入り乱れて雑踏の如く集結し、地方自治行政を語り合う環境になっていました。併せて県警本部や市警察署までが近接しており、口角泡を飛ばして、立場(我)を忘れて公安行政を語り合う光景等々、何もかもが混在していました。公務員の守秘義務すら何するものぞとばかりの勢いに乗って、虎視眈々と愚堕めき合う姿を横目に、官庁街ならではの興味津々の話題が飛び交う木っ端役人達の酒場談義には、連れが居れば適わぬ振る舞いだとはいえ、独り呑みしながら、嬉々として虎視眈々と聴き耳を立てて、聴できる絶好の酒肴を噛みしめる酔狂に嵌まってしまう程に、悦に入り浸りに為り切っていたものでした。

 傍や現任地の岩手県洋野町にあっては、町役場周辺の酒場に入り浸ってはみても、盗み聴き独り呑みの愉しめる環境はなかなか見当たりません。せめてもの機会として、一般企業戦士達が集い、先輩が後輩に説教を垂れる場面やら、一企業の営利収益獲得術を追究・伝授する光景に遭遇するくらいのものです。声高に社会の世相を語り合うような高邁な話題に遭遇する機会には疎く、それは時代の世情・地域性・感性の違いに依存しているように思われます。その地方ならではの末端指向(思考)に支配される現象なのかもしれませんね。